アイヌのししゃも伝説
ししゃもはアイヌの人たちにとって、冬を迎える前の貴重な食糧のひとつでした。
アイヌの人々に語り継がれたししゃも伝説が、産地には数多く残っています。
鵡川に伝わるアイヌの伝説をご紹介します。
☆飢えに苦しむ民を救った魚
ある日、天の国の雷の神カンナカムイの妹が鵡川と沙流川の水源地のシシリムカ・カムイヌプリに降り立ったところ、川下にあるどのコタン(村)からも煮炊きする煙が立っていません。
アイヌの人々は食べ物がなく、飢えに苦しんでいたのです。
それを知ったカンナカムイは「フッホー」とかけ声をかけ、聖なる柳の木のある川のほとりにある神の国に知らせました。
足の速いフクロウの女神が柳の枝を杖にし、魂を背負って駆けつけました。
神々は相談をし、柳の葉をススハム(ししゃも)として命を与え、鵡川に流し、その見守りを沖の老神、河口の神、入り江の神に任せました。
このススハムのおかげで人々は飢えから救われました。
☆柳の葉に生命を与えた神
神が住む天の国のススランペッという大きな川の渕に、神聖な柳の木がありました。
ある年、この葉がうっかり鵡川にひらひらと舞い、下界へと落ちてしまったのです。これを見た神様が、「神聖な柳の葉が地上に散って、コタンの木々の葉のようにただ朽ちてしまうのはかわいそうだ」と魚に化身させ、永遠の命を与えました。
こうしてススハム(ししゃも)が誕生しました。
毎年木の葉の散る季節になると、ししゃもは天の国を恋しがって川をさかのぼり、里帰りをするのです。
↑